株式インデックスファンドの永久保有戦略の経済合理性について

各種考察

株で利益を上げる方法は単純です。
安く買って高く売れば良いだけです。簡単ですよね?

しかし、これは言うは易し行うは難しの典型例であることは多くの投資家がよく知るところです。

では、株で損しない方法はあるでしょうか?唯一にして簡単な手法があります。それは、株を買ったら売らない、つまり永久保有戦略を取ることです。トンチみたいな話ではありますが、株を売らなければ損失が実現することはありません。

厳密にいえば、個別株であればその会社がつぶれてしまえば株は紙切れになるため大損しますが、インデックス株式投資であればこのリスクを回避できます。

株式インデックスファンドの永久保有戦略は長期で見れば損しないどころか大きな利益を上げる可能性が高い経済合理的な手法ですので、本記事ではその理由について説明します。

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株式インデックス投資の本質的な意味

株式の購入の本質的な意味は、株式会社の所有権を得るということです。

従って、株式市場全体に投資する株式インデックス投資の本質とは、株式市場全体の所有権を得るということになります。

株式市場では日々の労働者達による膨大な労働力により利益が創造されます。この労働力が経済発展の源泉であり、付加価値の源泉です。

つまり、インデックス投資とはこの労働市場全体から生み出される利益の一部を得続ける権利を手に入れることと同義です。

株式投資とは、現在手元にあるお金から得られる便益性を犠牲にして、将来半永久的に株式市場から生み出される利益を享受する権利と交換する行為です。そして、株式会社が存続する限り、株式市場は存続し続け、利益を上げ続けます。

永続する会社は選定できませんが、株式市場は資本主義(もしくは投資対象国)が崩壊しない限り永続すると言えます。

株式会社が得た利益の振り分け先は、配当金で直接的に、もしくは自社株買いで間接的に株主還元を行うか、もしくは設備投資費や内部留保金として会社の将来の安定的な成長に利用します。

内部留保金は大きすぎると弊害を生みますが、設備投資により会社が成長すれば、将来に渡ってより大きな利益を株主に還元することができます。従って、設備投資とは配当に掛かる諸経費を排除した配当再投資を行っていることと同義だと考えられます。

米国株式市場に投資した際の元本回収期間の試算

ここでは例として、効率的かつ再現性の高い資産運用先である米国株式市場へのインデックス投資を行う場合のリターンについて考えていきます。

以下の図(通称「宝の地図」)に示される通り、米国株式市場では過去200年間における平均年間実質トータルリターンは6.5~7%程度です。本来は上昇と下落の波が株式市場にはありますが、ここではあくまで平均値で推移すると一般化して考えてみます。

出典:AAII Journal

取り崩し割合が年間4%であれば30年以上に渡って破産することは無いということを示したトリニティスタディを参考にして、配当再投資をせずに年間4%をそのまま消費に使うことを仮定すると、100/4≒25年で元本分を取り返せることになります。

25歳時に一括投資を行い、この利益分の受け取り期間が50年(投資開始時から75歳まで)だとすると、投資額の2倍(=50年/25年)の資金を消費に使えて、かつ元本分が残ることになります。今考えている条件はインフレ率を除算した実質購買力ベースですから、数字上はインフレ分だけ増加します。

次に、将来の資産規模を最大化することを重視して配当再投資を行う場合、25歳時に一括投資を行って配当再投資を20年間続ければ、45歳時点で元本は3.5倍以上になります(1.065^20)。3.5倍になった投資額から得られる年間リターンは投資元本に対して14%(年4%の3.5倍)ですから、元本分の便益は7年程度で回収できます。また、46歳から75歳までこの年間リターンを消費に回す場合、元本に対し4倍以上の実質購買力を消費に使用でき、かつ元本の3.5倍の資産が残ることになります。

いずれの方法であっても、現在の便益を犠牲にして株式投資を行うことで、平均的には(あくまで計算上ですが)将来にずっと大きな果実を得ることができるということがわかります。

また、景気変動の波は長期投資になればなるほど影響は小さくなり、リターンは平均値に収斂していきます。

この事実こそが、株式投資の永久保有戦略が経済合理的行為である証左です。

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時間分散して積立投資を行うことの合理性

前段では、株式市場を丸ごと買う株式インデックス投資を行い永久保有することが合理的な投資手法であるということについて説明しました。

しかし、日本の株式市場のように30年以上に渡って株価が停滞することもあります。だからこそ、投資期間を長期間設け、時間分散して積立投資を行うことにより、このような歴史的な不運に陥るリスクを軽減させることが重要です。

米国株式市場であれば、配当再投資条件では15年以上の保有期間であれば基本的にプラス収支であった実績があるため、たとえ不運にも大恐慌に巻き込まれた場合であってもより安心してホールドを決め込むことが出来るでしょう。

株式会社は不祥事などにより暴落したり、最悪の場合は潰れることがあります。だからこそ、インデックス投資で株式市場全体に分散させることにより、個別株リスクを解消することが重要です。特定の株式会社は潰れても、株式市場全体がつぶれることはほぼ起こりえないからです。

もし万が一起こったとしたら、労働市場が崩壊して資本主義が成り立たない物々交換の世界になり生活を送ることすら危ぶまれる状況であるため、基本的には考えなくて良いリスクだと考えます。とはいえ、このリスクもヘッジしておきたければ、ゴールドなりビットコインなりを一定量持っておけば良いでしょう。

上記のような有事の際では、実物資産のゴールドよりも持ち運びと分割性の面で優れているデジタルゴールド「ビットコイン」の方が有用性が高いと考え、私はBTCを選好しております。究極的に有事の際のリスクヘッジ先として一考の余地があるでしょう。

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それでも米国一国集中は怖いということであれば、先進国株式インデックスファンドなり全世界株式インデックスファンドなりへ投資すれば、期待リターンは多少米国株に劣後しますがより安定した利益推移が見込めるでしょう。

こちらであれば、数十億人もの世界中の人間による気が遠くなるほど莫大な労働力(労働時間)が生み出す付加価値の一部を永続的に享受する権利が得られるのです。

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まとめ

株式インデックス積立投資からの永久保有戦略が如何に効率的かつ再現性が高い手法であるかということについて説明しました。

人は、短期的目線を持つ強欲で感情的な生き物です。従って、株価が高い時にはさらに上がると強欲さを発揮して購入し、株価が下がるともっと下がるかもしれないと感情的になって安値で売ってしまいます。この結果、「安い時に買い高い時に売る」という投資の原則を真っ向から否定する投資手法に帰着し、市場の養分となってしまいがちです。

これを防ぎ、長期的に大きな利益を享受する再現性の高い方法が、株式インデックスファンドの永久保有戦略なのです。

本来の株式市場の価値は人の労働力の総量に比例して大きくなっていくはず(ミスターバリュー)ですが、残念ながら現実は色々とあるため(それはもう色々と)景気拡大と景気縮小の大きな波(ミスターマーケット)が形成されてしまっております。

しかし、株式インデックスファンドの永久保有戦略を取ることにより、このミスターマーケットの波に翻弄されることなく、株式市場のバリュー、つまり労働市場のバリュー、更に言うと人類の活動全体の根本的価値に着目し、それを享受することが出来るのです。

メディアのネガティブキャンペーンとは裏腹に世界は少しずつですが良いものになっています。このことについては、おそらく時間に風化されない歴史的名著となるであろう「ファクトフルネス」にてデータを基にして示されている通りです。格差が拡大しているというのは事実ですが、一方でアフリカを中心とした貧困問題は実はすごい勢いで解決されてきております。

日々の労働により世界を少しでも良いものに変え、その結果得られた賃金を株式インデックス投資に回すことにより、人類の努力と繁栄のおこぼれに預かりましょう。

最後に、マイケル・ジャクソンの名曲『HEAL THE WORLD』(リンク先:YouTube)の素敵な歌詞を引用して終わりとさせていただきます。お読みいただきありがとうございました。

“Heal the world.
Make it a better place
for you and for me and the entire human race.”

(和訳)
世界を癒そう。
この世界をより良くしよう。
あなたのため、わたしのため、すべての人類のために。

– Michael Jackson, 『HEAL THE WORLD』

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