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【資金管理手法】下落相場でのシステマティックな購入戦略の検討

分析

暴落が来たら株を買おうと思っていても、いざその時になってみるといつ買えばいいのかわからないものです。

この理由は、下落相場の最中にあっては株価がどこまで下がるのかは誰にもわからず、下がれば下がるほど「まだまだ下がるのでは」と恐怖感を覚えることが原因でしょう。

いざ勇気をもって買い進めてみても、その後株価がみるみる下がっていけば、不要なナンピンを繰り返した結果底値にたどり着く前に玉切れを起こし、最悪の場合は底値付近で損切りとなるかもしれません。

このリスクを避ける手法の一つが、下落時にシステマティックに買い増しすることでしょう。ということで、その手法を検討してみました。

なお、ドルコスト平均法などで日々の労働収入から得られる余剰資金を定期的に積み立てている人は、それを継続した上で、暴落時用に用意したプール金のみに対してスポット的にこの戦略を取ることを推奨します。

※本記事の評価では為替変動は考慮せず、S&P500のドル建てを基準に評価しております。本記事の内容をご参考にする場合は、S&P500の値を基準にご活用ください。

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想定下落幅の設定

下落相場での買い増し戦略を立てるには、どこまで下げるか想定することが不可欠です。ここで便利なのが、株価の正規分布仮説に基づく標準偏差(σ)を用いた考え方です。

株価の変化量とその確率が正規分布となるという少し乱暴な仮定を用いると、下落幅とそれが起こる確率を数学的に求めることができます。

ここで指標となるのが標準偏差ですが、これは投資でよく使われる「リスク」という言葉と同義です。リスクとリターンを最適化せよ、とはよく言われますが、ここで言うリスク=標準偏差となります。

さて、確率統計論において、株価の年間の値動きに対して正規分布を仮定すると、年間期待リターン±σ(σ:標準偏差)の範囲に入る確率が約68%、年間期待リターン±2σに入る確率が約95%、年間期待リターン±3σ内の確率が約99.7%となります。

つまり、下落幅は2σを想定しておけば、それを超えるのは2.5%の確率(プラス側とマイナス側に半々であるため5%/2)、つまり40年に一度となります。

-2σまでしっかりと計画的に買い進めることが出来れば下落相場での買い増し戦略としては十分に成功していると思います。もしも、100年に一度のリーマンショックレベルの事象が再来して-2σを超えてくる場合は、-2σ以降は「勤倹貯蓄」をスローガンに必死に労働収入を全力で入金する積立投資にシフトすればよいでしょう。

リタイア済みの方でも、このような不遇の時期にはアルバイトなどを積極的に取り入れる方が資金効率的に優れます。

どこまでの下落を想定するかは個人の自由なので、めったに起きませんが3σ下落時にこそ仕込みたいという方は3σに設定するのもよいでしょうが、流石にそれ以上はやりすぎかなぁと個人的には思います。

細かいことを言うと、株価は正規分布よりもロングテールな「べき分布」に当てはまるという考察もあり、データ的に見ても特に日次変化では正規分布では説明がつかない確率で特異な変動が頻発してますが(4σも度々起こります)、年間値動き幅であればそこまで心配する必要はありません。

では、具体的な変動範囲を検討しましょう。ここでは例として米国株式市場の年間値動きを対象とします。

米国株式市場では、1965~2015年のデータによると標準偏差σが17%とのことですが、我らがシーゲル教授の1871~2006年の試算によると名目キャピタルリターンベースで18.3%となっております。

出典:ジェレミー・シーゲル『株式投資 第4版』

ということで、ここでは間を取って少し保守的にS&P500の年間標準偏差σ=18%と置きます。すると、各確率区間に収まる年間変動幅は以下のように求まります。

標準偏差年間変動幅(%)確率区間
σ±1868.3%
±3695.5%
±5499.7%

変動を考える上での基準値としては、直近高値とかでいいと思います。従って、下落幅-2σを想定する場合、2020年3月初頭時点での想定は以下となります。

S&P500直近高値 :3400
想定最大下落幅 :-36%(-2σ)
想定底値    :2180

これを念頭に置き、下落相場での買い増し戦略を検討していきます。

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下落相場買い増し戦略

買い増し戦略としては色々なものが考えられますが、ここでは基本的な3つの戦略+おまけ1つを考えてみます。暴落用のプール資金は200万円として、これをどう資金管理するのかというのがテーマです。

・入金額一定ケース
・入金額倍率固定ケース
・下落率変動ケース
・(おまけ)レバレッジETF併用ケース

入金額一定ケース

まずはオーソドックスな例として、購入価格差を一定として、定額買い付ける方法についてです。

買付回数は四回とすると、直近高値から見て0.5σ、すなわち9%下落するごとに購入することとなります。購入額は一定ですので、ここでは毎度50万円を投入することとします。

それではS&P500の値と、例としてeMAXIS Slim 全米株式(S&P500)での買い付け価格、下落率、そこまでの平均購入単価、平均購入価格割合(直近高値から見た平均購入価格の割合)を以下に示します。

S&P500eMAXIS Slim
S&P500
価格割合
(トップ比)
下落率投入額Slim S&P500
平均購入単価
平均購入
価格割合
340012861100
3090117000.910.0950117000.91
2790105000.820.1850111000.86
248094000.730.2750105330.82
218082000.640.365099500.77

0.5σ下がるごとに淡々と買い増すことにより、2σ(36%)下落時の平均購入価格割合は0.77となります。つまり、総投入額に対して平均して23%ほど、最高値から安く購入出来ているという算段です。

2σ下落時の価格からしてみれば10%以上高い価格での平均買付結果となりますが、それでもそこそこいい感じで仕込めていることがわかります。

無論、1σまでしか下げなかったということもあり得ますし、想定まで下げなかった場合であっても定期的に購入出来ているため、安値セールの機会損失を回避しつつそこそこの安値で仕込めるという意味で、バランスの良い手法と言えるでしょう。

 

入金額倍率固定ケース

次に、下落が進むにつれて買い付け金額を増幅させていく入金額倍率固定ケースについて考えていきます。買い付けタイミングは上のケースと同様に0.5σ下がる毎に計4回買い付けるとします。

投入額については、一回目の購入価格を基準に二回目以降は固定倍率(ここでは1.5倍)を掛けた値とします。

S&P500eMAXIS Slim
S&P500
価格割合
(トップ比)
下落率投入額Slim S&P500
平均購入単価
平均購入
価格割合
340012861100
3090117000.910.0925117000.91
2790105000.820.1838109800.85
248094000.730.2756102320.80
218082000.640.368493880.73
入金倍率入金合計
1.5倍203万円

入金額は合計203万円となってますが、約200万円ということでご容赦ください。

この例では、最初に0.5σ下げた際に25万円買い付け、その後も0.5σ下げるたびに38万円、56万円、84万円と買い進めていきます。

これにより、2σ(36%)下げた際に、平均購入価格割合は0.73となるので、平均して直近高値より27%安く買い付けることに成功しております。さきほどの入金額一定ケースでは23%安だったので、更に安く仕入れられております。

難点としては、予想まで下げなかった場合に仕込める金額が少ないということですね。とはいえ、暴落時というバーゲンセールに備えるためにプール金を用意している人にとっては、その目的は安値でガッツリ仕込むことですから、その目的に対してはそこそこ適う手法となります。

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下落率変動ケース

次に紹介するのは、一回当たりの投入額は固定しつつ、買付を行う下落率を変動させるケースです。なるべく安値で仕込みたいということを実現するためには、上のケースのように安くなればなるほど投入額を大きくするか、本ケースのようになるべく下がってから投入を開始するという下落率変動ケースぐらいしか手段がありません。

変動幅S&P500eMAXIS Slim
S&P500
価格割合
(トップ比)
下落率投入額Slim S&P500
平均購入単価
平均購入
価格割合
340012861100
0.83σ2890109000.850.1550109000.85
1.28σ262099000.770.2350104000.81
1.67σ238090000.700.305099330.77
218082000.640.365095000.74

本ケースでは、下落率が0.15、0.23、0.30、0.36となるタイミングで購入することとします。ちなみに、2020年3月初頭時点ですでに下落率0.15のラインに一度肉薄しております。

一回目の購入をここまで我慢することが出来れば、購入額が一定であっても2σ(36%)下落時に全体として平均で26%安値で仕込めたことになります。二回目以降は下落幅がほぼ一定ですが、どこで下落が止まったとしても十分な仕込みが出来ており、下落相場での買い付けとしては成功と言えるでしょう。

なお、私の戦略はこれであり、すでに一度購入しております。しかし、ここで積立投資を中心に据えている国内投資信託派の人には注意点が一つあります。

それは、「海外銘柄を扱う投資信託は、買付申込時と購入タイミングとでタイムラグがあるため申込時の価格では購入できない」ということです。

これは、上にも下にも変動するリスクがあるのでどちらに転ぶかは運次第ですが、私は大暴落時(Slimで10850ぐらい)に注文を入れたにもかかわらず、前日比約5%上昇という歴史的なダウ上昇日(Slimで11380)に購入するという残念な結果となりました。

投資信託派の人であっても、ボラティリティが特に大きい暴落相場においてはVOOや1557等の即座に購入が成立するETFをスポット買いして、平時にeMAXIS Slimなどの投資信託に切り替えるということを推奨します。

(おまけ)レバレッジETF併用ケース

ここまでの内容で十分だと思うのでここで終わっても良いのですが、せっかくなのでレバレッジETFを活用したガッツリ仕込み手法をご紹介します。

ただし、この手法は一部の人を除きお勧めはできません。2020年3月現在の新型コロナウイルスと米国大統領選の影響による下落相場の中でTwitterを見ていると、レバ3倍ETFを使っている人の多くが日々の値動きに消耗しており、そのストレスたるや並大抵のものではありません。値動き的には○○ショック級ですからね。

S&P500で見れば高々十数%下がった程度なのでインデックス投資家にはなんてことはないのですが、個別株投資家では狼狽売りは頻発しており、レバ三倍ETFでは自らの合理的思考力の高さを主張するような方でも狼狽売りするようなケースもみられるため、レバ3倍ETFは本当に使う人を選びます。(私は「今こそその時では…」と思いますが)

また、米国証券取引委員会(SEC)がレバレッジETFの規制を目指すような動きも見られており、長期的な活用性に疑問符が浮かんでいるのが現状です。

ということで、以下は参考程度にお楽しみください。

さて、それではS&P500の日次変動の3倍動くブル3倍レバレッジETFであるSPXLを併用した買付ロジック例を以下に示します。

(クリックで拡大して見てください)

購入タイミングと投入額を以下に示します。0.5σ下落するごとに買い増しとし、投入額は毎回50万円としております。

SPXLを併用した下落相場 買付けロジック
-0.5σ…S&P500:50万円、SPXL: 0万円
-1.0σ…S&P500:40万円、SPXL:10万円
-1.5σ…S&P500:25万円、SPXL:25万円
-2.0σ…S&P500:  0万円、SPXL:50万円

1回目の購入ではS&P500に50万円投入しますが、最後の四回目の購入時は50万円すべてをSPXLに投入します。

SPXLの下落幅は、S&P500の下落幅の2.5倍と適当に設定しております(値動きの推移に大きく影響されるためかなり適当です)。この設定では、2σ下落時には合計200万円の投入資金ですが、見かけの投資額(株式エクスポージャー)は約290万円と計算できます。

ブル3倍ETFを活用することにより、ナンピン買いしているにも関わらず最安値の条件で1.46倍のレバレッジを効かせて200万円投入できているというのは中々素敵ですね。

とはいえ、更に1σ下がったりしたらSPXLはそこから45%程度暴落する計算になるため、リスクとリターンはまさに諸刃の剣と言えます。

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まとめ

下落相場に買い増しを行うために、下落幅2σを想定して様々な手法を検討してみました。

手法をまとめると以下となります。

・入金額一定ケース
・入金額倍率固定ケース
・下落率変動ケース
・(おまけ)レバレッジETF併用ケース

それぞれ一長一短ありますが、ご自身に合いそうなものを検討してみていただければと思います。その上で、個々人でカスタマイズして戦略を練ってみてください。

今回の検討では文献調査やモンテカルロシミュレーションは行っておりませんが、有用な文献情報や手法を思いついたという方がおられましたら、記事下のコメント欄やTwitterにてご連絡ください。(返信が遅くなるかもしれませんが相談とかでもお気軽にどうぞ)

なお、本記事で記載した内容は、積立投資をしっかりと行った上で余剰資金で更なる買い増しを狙うことを前提としております。何があっても積立投資は辞めずに設定をいじらないこと、これが投資戦略としては最重要だと考えます。

本記事が、下落相場で狼狽売りして市場から退場する人を一人でも減らし、下落相場=仕込み時のバーゲンセールと考えることにより読者の方々の下落耐性UPに少しでも貢献できれば幸いです。

Have a good recession!!

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