経済的な面から考えた場合、奨学金は繰上返済すべきなのでしょうか?
結論から言うと、投資をしている人や今後投資をしてみようと思っている人は、繰り上げ返済をすべきではありません。一方で、ひたすら貯金をしており、今後も株などへの投資は行わない予定である人は、今すぐにでも繰上返済を行うべきです。
何故このように考えられるのかについて、ケースごとに見ていきましょう!
奨学金制度の種類
奨学金制度には、以下のように様々な種類のものがあります。
奨学金は利息付きか無利子のものが殆どですが、中には返済不要な給付型のものもあります。
本記事では、代表的なものとして、無利子の第一種奨学金と利息付きの第二種奨学金について話を進めていきます。
第一種奨学金(無利子)の返済
第一種奨学金は、無利子なのでリスクなくお借りすることが出来ます。
著者も大学院時代に利用してました。(ありがたいことに給付型のものも戴いてました)
社会人経験も5年を過ぎるとそれなりの資産が形成されてくると思いますが、第一種奨学金の返済額がまだ残っている場合に、繰り上げ返済するべきなのでしょうか?
経済性を考えると繰り上げ返済はしないべきであると言えますが、その理由は以下です。
一つ目の理由は、わかりやすいですよね。
借り続けていても額が膨らまないのであれば、安全な日本国債を買ったり銀行の定期預金に入れておく方が利息が得られるためよほどましですね。
二つ目の理由は、少し難しいかもしれません。
今手元にある一万円と、一週間後に手にする一万円のどちらの方が価値があるかというと、経済学的には手元の一万円の方が価値が高いのです。その理由は、手元の一万円は貸し出すことにより利子をつけることができるからです。
また、未来の一万円は現在価格の一万円に比べてインフレ率分だけ価値が棄損されます。
100年前の一万円と今の一万円では価値がまるで違いますよね?
従って、未来に得られるお金は、今のお金と比較する場合は割引率をかけて考えなければなりません。
逆に言えば、同じ額の借金であれば、無利子の場合はなるべく遅くに返済した方がお得ということです。
第二種奨学金(利息付)の返済
第二種奨学金には、利息が付きます。利息は3%を超えない値として設定されておりますが、ここでは仮に1%と設定します。
果たして、1%の利息がある場合、奨学金を繰り上げ返済するべきなのでしょうか?
この質問に対しては、以下二つの場合により回答が変わってきます。
今後投資をする予定がある場合
今現在投資を行っているか、或いは今後投資をする予定がある場合は、投資による期待リターンを計算してみましょう。
その期待リターンが、設定した奨学金の利息1%を超える場合は、奨学金の返済は後回しにしましょう。
未来のことは定かではないので断言はできませんが、米国株式市場の85%ほどを網羅するS&P 500のインデックス投資信託に投資しておけば、過去40年ほどの実績では年利9%を超えますし、年利7%は期待できます。
もしくは、為替リスクはありますが2019年1月現在の米10年国債の年利は2.7%です。
全世界に投資するポートフォリオを組んだ場合は、3~5%が期待年利となるでしょう。
投資をするからには期待リターンは1%を超えているでしょうから、投資をする方の場合は奨学金の返済は後回しにし、手元の資産に働いてもらう方がよさそうです。
以下の記事ではS&P500のインデックス投資信託の活用方法も含めて、複利の力を利用した資産形成方法を具体的に示しておりますので、ご興味があればお読みください。
投資に興味が無い場合
投資に興味が無く、今後も投資を行わないという方は、可能であれば今すぐ奨学金を全額返済しましょう!
例えば500万円の奨学金返済額(利息1%)が残っていて、これをすぐに返した場合とこれから10年かけて返す場合だと、最終的な返済額に約23万円の差が出ます。
これは、年間に均すと22700円です。無視できない額ですよね?
つまり、今500万円を払って奨学金を繰上返済をするという行為は、年間2.3万円、10年間で23万円を稼ぎだすという年利1%(リスク0)の投資をしたことと同じです!!(単利ですが)
500万円を銀行の定期預金に入れて10年寝かしてても、はした金しか得られません。
どうせ使わないお金なのであれば、年利1%の借金を返済した方が圧倒的にお得ですよね。
まとめ
奨学金を繰上返済すべきかどうかについて、利息の有無や個人の投資指向の場合分けを行い、経済性の観点から最適解を検討しました。
上記検討はあくまで経済性のみを考慮した場合の一つの考え方に過ぎず、無利子の奨学金への繰上返済を否定するものではありません。
将来有望な学徒を一人でも多く助けるためにも早めに返済するという選択は、正しい行いだと思います。
利子付きの奨学金の返済がまだ残っており、それなりの貯蓄があり、なおかつ投資への興味が無い方は、一括繰上返済が経済的にも人助けの面でも最適解となるでしょう。
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