【FIRE戦略】遺族年金100万円の差!?資産管理法人で遺族厚生年金保険の受給資格を得よう

資産管理法人シリーズ

前回前々回の記事で、資産管理法人を設立して法人口座で資産運用を行うことにより譲渡益課税を大幅に節税できること(セルフNISA(改))をご紹介しました。

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今回の記事では、特に家族持ちのFIRE民を対象として、万が一ご自身が早くに亡くなった場合に残された家族に給付される遺族年金の情報を紹介します。この点は見逃しがちだと思いますが、資産管理法人を設立して厚生年金保険に加入した場合では、18歳以下の子持ちの家庭の場合は国民年金保険加入の場合と比べて遺族が得られる遺族年金が年間50万円以上増額する可能性があります。さらに、DINKSや子が18歳を超えた場合は最大100万円以上の差が開きます!

引用元:公的年金受給者に関する分析 ②(厚生労働省)

現に、上図を見ていただくと、妻を亡くした夫の遺族年金給付額(左グラフ)は、遺族基礎のみの場合(青線)と遺族基礎+遺族厚生の場合(赤線)とでさほど差がないですが、夫を亡くした妻の場合(右グラフ)には、遺族基礎のみの場合と遺族基礎+遺族厚生の場合とでピーク値が45万円ほど異なります。また、子がいない家庭の場合は国民年金だと遺族基礎年金すら出ないですから、遺族厚年(中高齢寡婦加算あり)の金額分だけ差が出ます(月8~10万円がピーク)。

本記事では、遺族年金の概要を説明するとともに、FIRE民が資産管理法人を設立したのちに、不幸にも早死にした場合に遺族年金はどの程度家族に支給されるのかということについて解説します。

遺族年金の仕組み

遺族年金とは、家族持ちの方が亡くなった際に残された遺族に給付される年金です。年金というと老後のイメージがありますが、老後に受給する年金は老齢年金といいます。遺族年金は、給付条件がそれぞれありますが、老後でなくても給付されるものです。遺族年金には大きく分けて遺族基礎年金と遺族厚生年金の二種類があります。(厳密には遺族共済年金もありますがここでは除きます)

遺族基礎年金の概要と受給条件

遺族基礎年金は、国民年金保険に加入していて死去された方に生計を維持されていた「18歳以下の子供がいる配偶者」、または「子」が受給できる遺族年金となります。つまり、これは子供がいる家庭のための子育て支援制度と言えます。「生計を維持されていた」とは、原則として亡くなった方と同居していた残された遺族の前年の収入が850万円未満、または所得が655.5万円未満であることという所得制限を意味します。これらの条件を満たし、かつ以下の条件を満たせば遺族基礎年金の受給対象者となります。

  1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき。
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき。
  3. 老齢基礎年金の受給権者であった方(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る) が死亡したとき。
  4. 保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき。

厚生年金保険に加入している人は1.の条件を満たさないので対象外だと思うかもしれませんが、大丈夫、対象です。というのも、厚生年金加入者は、同時に国民年金の第二号被保険者として国民年金に加入しているとみなされるからです。

従って、65歳以下の国民の大多数はこの要件を満たします。ただし、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が、被保険者期間の3分の2以上あることが必要です。(つまり1/3以上の期間で保険料未納だと対象外)

遺族基礎年金の年金額

遺族基礎年金の年金額は、子のある配偶者が受け取る場合と子が受け取る場合とで異なります。


引用元:遺族年金ガイド 令和四年度版(日本年金機構)

なお、子供が18歳以上に成長した場合は、妻も子も遺族基礎年金の受給資格を失います。あくまでも子供のための遺族年金が、遺族基礎年金のスタンスですね。

遺族厚生年金の概要と受給要件

遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入していて死去された方によって生計を維持されていた「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」または「祖父母」が受け取ることができる遺族年金です。受給者の対象が広いですが、優先順位が一番高い人だけが受給できます。

こちらの目的は子育て支援に限定しているのではなく、残された遺族の生活を支えることを目的としております。そして、遺族基礎年金とは異なり、厚生年金保険料を払った分だけもらえるシステムとなります。

配偶者が妻の場合は年齢要件がありませんが、子のない30才未満の妻の場合は5年間の有期年金のみの支給となります。
一方で、夫、父母、祖父母の場合は55歳以上でないと受給資格が得られず、更に60歳まで支給停止となってます(60歳までは働けということですかね)。
子と孫は、基本18歳の年度末までが支給対象です。

受給要件は以下となります。

・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき。
・厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき。
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が、死亡したとき。
・老齢厚生年金の受給権者であった方(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る) が死亡したとき。
・保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき。

あとは、加入期間の1/3以上の期間で保険料未納の場合と、直近1年間払ってない場合はたとえ厚生年金保険の被保険者であっても受給資格を失います。

重要なのは、たとえ過去に多額の厚生年金保険料を納めていようが、故人が亡くなったタイミングで厚生年金に加入していなければ、25年以上厚生年金保険料を納めていない限り、残された家族には遺族厚生年金の受給資格が無いということです。この点は、脱サラ後であっても受給資格を満たせば支払われる老齢厚生年金とは大きく異なりますので十分注意が必要です。

つまり、FIREして国民年金保険料を払っている多くのFIRE民は、会社勤続年数が25年を超えていない限り、ご自身が亡くなった場合に家族には遺族厚生年金が支払われません。一方で、資産管理法人を設立して厚生年金保険に加入していれば、たとえ給料が最低限であってもあなたが亡くなったらご家族が受給条件を満たせば遺族厚生年金が支払われます。しかもその額は、会社員時代の年収が反映された形で、平均月額報酬に基づいて支給されます。

遺族厚生年金の年金額

遺族厚生年金の年金額は、以下に示される式に基づき、遺族の中で優先順位No.1の方に支払われます(配偶者、子、父母、孫、祖父母の順)。


引用元:遺族年金ガイド 令和四年度版(日本年金機構)

FIREを目指している人で平成15年以前に働いていた人は多くはないと思うので、基本的にB式だけ見れば大丈夫です。B式を見てわかることは、年金額は故人の平均標準報酬月額と加入期間の月数に比例するということです。

FIRE民への朗報は、※4に書かれている部分です。厚生年金保険加入期間が25年未満の人は、25年間働いたとみなして遺族厚生年金を支給しますよということです。これは、10年間などといった超短距離走で駆け抜けたFIRE民にとっては非常にありがたい制度ですね。

さらに凄いのが、夫を亡くした妻に18歳未満の子がいない場合、40歳から65歳の間には中高齢の寡婦加算額というものの支給対象となり、583,400円が定額で支給されます。つまり、子が18歳を超えたために妻が遺族基礎年金をもらえなくなっても、20万円ほど減額された年金が支給されると考えられます。

これは、子のいない妻にも支給されますので、DINKSのFIRE民の場合には厚生年金に入っていれば夫が亡くなった際に奥様が40歳以降では年100万円以上(寡婦加算額58万円+遺族厚生年金)の遺族年金を受給できることとなります。国民年金だとこれがゼロです。なお、妻を亡くした夫は寡婦加算額の受給対象ではありません。男は自分で働いてどうにかしろということですね。昭和の価値観の残り香が漂っております。

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資産管理法人で厚生年金に加入した際の遺族厚生年金の試算

次に、以下の表をご覧ください。これは、夫か妻が亡くなった場合に、残された側の年齢と子供の有無を元に算出した年金支給額をまとめた表です。厚生年金の支給額の計算では、亡くなった方の厚生年金保険加入期間を25年間として計算されてますのでFIRE民にぴったりのものとなっております。


引用元:遺族年金(必要保障額シミュレーション)|オリックス生命保険株式会社 (orixlife.co.jp)

こちらの図表をみると、夫が死亡した場合では、夫が自営業者か会社員かによって遺族年金支給額は月額36万円も異なります。各人の家族構成に照らし合わせてざっくりとした支給額をご確認ください。(実際は細かい条件が色々ありますので、遺族年金ガイドを一度熟読することを推奨します)

ただし、上表の計算では遺族厚生年金の値が私の計算よりも1.3倍ほど大きな値となっており、ちょっと計算が合いません。私の計算が間違ってるのかもしれませんが、もしかしたら上表では遺族厚生年金を求める際に厚生年金の比例報酬部分に対して3/4を掛けるのを忘れているのかもしれません…

ケーススタディ

遺族年金制度の概要と支給額のざっくりとした雰囲気はつかめたけど、資産管理法人を設立したFIRE民の場合の年金額は死亡タイミングによりどう推移していくのさ?という疑問が生じる方も少なくないかもしれません。ということで、ケーススタディとして具体的な死亡年齢と遺族年金額の試算をしてみます(縁起でもないですが)。

本ケースの主人公は、25歳から大企業の総合職として働き始めた男性と仮定します。FIREをするぐらいですから一般的な年収よりは高いですが、途中で会社が嫌になり30歳までに年収を落として二回転職している立派なFIRE適合者(社会不適合者)と設定します。なお、同水準の年収を得る妻とダブルインカムにより資産形成を進めていると想定します。

そして、40歳の時点でFIREし、資産管理法人を設立して年間55万円の役員貧乏報酬を得る代表取締役社長となり、念願のFIREを実現することとします。

この場合の平均報酬月額、遺族厚生年金、次いで(老齢)厚生年金の金額の推移を見てみましょう。

青線が厚生年金保険の加入期間全体に対する平均報酬月額であり、オレンジ線と灰色線はそれぞれ遺族厚生年金(そのタイミングで亡くなった場合の値)、厚生年金(老後もらえるやつ)の年額を表します。30歳までの期間がカクカクしていていびつですね。

ところで、遺族厚生年金は厚生年金の金額の3/4のはずでしたが、44歳ぐらいまでは遺族厚生年金の方が厚生年金よりも高額となっております。これは、例の25年ルールのおかげです。この人の場合は25歳から働き始めたので、25年が経った50歳になるまでは25年ルールに下駄をはかせてもらっており、いつ死んでも最低でも年40万円ほどの遺族厚生年金が家族に毎年与えられることとなります(現行の規定では)。50歳以降は25年ルールの魔法は解けますが、平均報酬月額の低減率よりも厚生年金加入期間の増加率の方が大きいため、少しずつ年金額は増額しております。

この額に遺族基礎年金を追加したものが、家族に給付される総年金額となります。妻+子供一人なら遺族基礎年金は約100万円、子供二人なら約122万円、子供が18歳を超えて妻が4065歳の間は58万円(中高齢の寡婦加算額)が、遺族厚生年金に追加で与えられることになります。

更に5000万円以上の運用資金を残しておけば、超盤石な3%ルールの取り崩しでも年間150万円以上となります。つまり、このケースでは、いつ死んでも最低でも年間250万円以上(中高齢の寡婦加算額58万円、遺族厚生年金41万円、取り崩し150万円以上)を毎年家族に生活費として残せることとなります。

もし死なずに高齢者になるまで生きることができれば、老齢厚生年金を年間60万円近く得られることになりそうですね。(マクロ経済スライド等が作動して実際は激減すると思いますが無いよりはましでしょう)

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まとめ

FIRE民が資産管理法人を設立して、厚生年金保険に加入した場合のメリットの一つである遺族厚生年金についてシミュレーションを交えて説明しました。多くのFIRE民はお若いので、自分の死などあまり想像できないでしょうから、遺族年金までは考えていない方も少なくないかもしれません。

しかし、確率的には非常に低いことではありますが、運が悪ければそれは起こりえます。

最悪の事態を想定し、それでも盤石な体制を築くことは、FIREすることにより妻や子にリスクを背負わせている家族持ちFIRE民には必須だと個人的には思います。(そして、家族の世間体のためにも、資産管理法人を設立して代表取締役社長として会社に勤めることは悪くない手段じゃないかなと思います)

なお、年金制度は非常に複雑なので、ご自身の年金支給額を知りたい場合はねんきんネットやねんきん定期便などを調べ、可能であれば自治体等で確認すれば不安がなくなると思います。

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